PROJECT 02 ゼロカーボンシティ杉並の実現に向けた気候変動対策[杉並区]

MEMBER

  • 環境部
    温暖化対策担当課長
    平成20年度採用
  • 環境部
    環境課計画推進係
    令和5年度採用
  • 環境部
    環境課温暖化対策係
    令和7年度採用

「2050年ゼロカーボンシティ」を目指す
温室効果ガス排出量実質ゼロへの取組み

干ばつや豪雨、台風などの強大化、猛暑による熱中症被害や深刻な自然災害の発生など、地球温暖化は暮らしや命にかかわる問題となっています。再生可能エネルギーの導入や、省エネルギー対策の推進などの気候変動対策で、地球温暖化の要因となる温室効果ガスの排出量を削減し、2050年までに「ゼロカーボンシティ杉並」の実現を目指しています。

自由な議論から区民の声を汲み取って
区の施策に生かし、つなげる。

杉並区の気候変動対策の主な取組みの1つに、区民の参画による「気候区民会議」があります。区民のみなさんの中から無作為抽出で80名程度の方を選出して、専門家からの情報提供を受けながら、気候変動に対してどんな施策ができるか、自由に議論して提案してもらうものです。区民の声を直接聞いて、その意見や提案を区が形にしていくという施策になります。
私は、温暖化対策係という部署で、再エネ導入や省エネ推進に関する助成金事業の窓口対応や申請書類の審査・確認を中心に行っています。太陽光発電システムや、LED、電気自動車の充電設備など、助成金は多岐にわたるので、区民や事業者のみなさんにわかりやすく説明できるよう心がけています。
私は区内のイベントで使われる使い捨てプラスチックの削減を目的としたリユース容器の貸し出し事業の立ち上げに携わりました。繰り返し洗って使うことができ、破損して使えなくなった場合にもマテリアルリサイクル可能な食器を、区民のイベントや各団体に無料で貸し出しています。
杉並区は、ゼロカーボンシティの実現に向けて環境問題や気候変動対策に力を入れており、この3年で職員も増えています。リユース事業は、循環型社会の構築に向けての取組みが何かできないかを職員みんなで考えてスタートした事業です。気候区民会議もそうですが、区民のみなさんがどう思って、どうしてほしいのか、区民の暮らしに寄り添う施策を実現していきたいと考えています。
リユース事業は杉並区でも新しい取組みで、かつ他の事例や実績も少なかったので、実際にどのくらいの食器を導入したらよいのか、たくさん導入しても使ってもらえなかったら?という不安もありましたが、結果として多くの地域のイベントで活用していただいています。プラスチックの食器ではなく、リユース食器を使うことをきっかけとして、ワンウェイ(使い捨て)プラスチックの削減について、区民のみなさんの関心や意識も高まると良いなと思います。
窓口業務や電話対応は、区民のみなさん一人ひとりと丁寧に向き合うことを大切にしています。区民・事業者の皆さんの理解や協力を得ることが、気候変動対策の最初の入り口だと思っています。

データの見える化と体験型事業で
よりわかりやすい温暖化対策に。

「温暖化って目で見えなくて、正直よくわからない」「現状を把握できるような見える化をしてほしい」という、気候区民会議での提案もあり、区民向けにさまざなデータを可視化した「ダッシュボード」を区のホームページで公開しています。温室効果ガスの排出量や太陽光発電の普及状況をグラフと数字で見ることができるので、区の取組みを知っていただく機会にもなるかと思います。
さまざまな取組みに関わる中で、多くの方との縁が広がり、それが新しい取組みへとつながる場合もあります。交流自治体である青梅市で始めた親子参加型の体験型森林環境学習もそのひとつです。青梅市で林業を営む方々にレクチャーを受けながら一緒に間伐体験を行い、森林の大切さを体感します。
気候変動の問題には、将来世代である子どもたちが大きな影響を受けるという側面があります。そこで令和7年度は、将来世代のユースのみなさんを集めたワークショップを実施しました。区内在住の中・高校生の中から無作為に選出した方と自ら手を挙げてくれた方、合わせて50名程度で意見交換を重ねました。
小中学生が一緒に環境について考える「小中学生環境サミット」も毎年実施しています。生徒たちが環境についての学習成果を発表して質疑を交わす場ですが、お互いの学習成果に刺激を受け、関心を高めるとてもよい機会になっています。
ユースのワークショップでは、2050年に脱炭素社会を実現した杉並区がどんな姿になっているか、まずAIを使って画像生成し、次にその姿に至るためにはどんな新しい仕組みや仕掛けが必要となるか議論をしました。こうした区民参加による気候変動への取組みを今後も増やしていきたいと思っています。

キーワードは「区民参画」
みんなで創るゼロカーボンシティ

窓口での区民のみなさんへの説明もですが、専門知識に長けたプロの事業者のみなさんに向けて助成金事業の説明会を行った時はとても緊張しました。顔を合わせての対応で、知識だけではなくコミュニケーション力も問われるのでとても鍛えられます。
杉並区では、若い職員が多く、区政の多くの現場で活躍しています。情報発信の方法などもこうした若い職員の新しい感性や発想をどんどん採用していかねば、と日々感じています。
リユース食器により食事を提供しているイベントでは、「次のイベントのメニューは何がいい?」と、回収箱をいくつか設置して使い終わったスプーンで投票するといった、食器の回収率アップの工夫もしてくださっています。このように、区の事業を活用する中で区民の方々が色々工夫してくださって、みなさんと気候変動対策に取り組めることに大きな意義を感じます。
みなさんと協力し合いながら、「ゼロカーボンシティを目指す」という大きな社会課題の解決に取り組む中で、自分の成長を実感できることがこの仕事のやりがいだと感じています。
小中学生環境サミットで子どもたちが一生懸命発表している姿や、区内のさまざまなイベントでリユース食器が活用されている様子など、自身が携わった取組みが形になって見えると嬉しいです。
ゼロカーボンシティの実現には社会の変革が必要ですが、それには区民一人ひとりの意識や行動が欠かせません。現場を持つ自治体ならではの脱炭素のアプローチを職員みんなで考え実践していきます。